こんにちは、ばんばんです。
2021年の11月に軽い気持ちで仮想通貨取引を始めてみましたが、年末・年始にかけてあれよあれよと含み益が大きくなってびっくりしています。
取り引きを始めるにあたって、Webで調べてみると、「タイは仮想通貨の税金が安い!」とか、「仮想通貨税金は一律15%」とかいった記事がいくつか見つかります。
日本貿易振興会(JETRO)のホームページにはタイの仮想通貨税について以下のような記載がありました。
歳入法の改正により仮想通貨(ビットコイン等)による利益は、収入としてみなされ、15%の所得税の対象となる。
(参照:JETROホームページ https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/invest_04.html)
「へーーっ、タイは仮想通貨の税金安いんだ!」と思ってました。先月までは・・・。
タイ人の知り合いから、「所得税に合算されて累進課税だよ」と耳にして、じっくり調べてみましたので、その結果及び推察を報告しますね。
今回は、タイに180日以上滞在し、タイで納税義務があるケースについての考察です。
※各種資料、説明動画等で調べましたが、一部考察が入っていることをご理解のうえ、参考としてお読みください。
2022年早々、英字新聞バンコクポストに「2022年は源泉徴収するよ!」といった内容の記事が掲載され、ちょっと話題になりましたので、こちらも併せてお読みください。
こんにちは、ばんばんです。 タイでも2021年前半に仮想通貨ブームが巻き起こり、仮想通貨取引をする人の数が大幅に増加しました。 現在のタイの税制では仮想通貨の利益に課税するという法律はあるのですが、計算方法や源泉徴収のやり方がグ[…]
2018年発行の仮想通貨税とは?
2018年5月10日に”Emergency Decree on Digital Assets Business 2561”という仮想通貨に関する法令が発行され、仮想通貨全般に関する仕組みを整理したうえで、関連法案が一部修正されました。税金の話も盛り込まれています。
同法令の対象者は以下のように規定されています。
- Digital Assets trading/exchange center
- Digital Assets brokerage
- Digital Assets trader
- Other business related to Digital Assets as the Minister of Finance prescribes based on the SEC’s recommendations
(参照:KPMG / Taxation of Digital Assets: https://home.kpmg/th/en/home/insights/2018/05/tax-news-flash-issue-380.html)
あっ!トレーダーが入っていますね。
この法令の中に税金の項目があり、
Section 50 of the Revenue Code specifies withholding tax obligations in respect of payment of income to an individual. ・・・(中略)・・・The withholding tax rate is 15%.
(参照:KPMG / Taxation of Digital Assets: https://home.kpmg/th/en/home/insights/2018/05/tax-news-flash-issue-380.html)
英語を読んでもよく分からないのですが、、、Google先生に翻訳してもらうと、
「歳入法のセクション50は、個人への所得の支払いに関する源泉徴収税の義務を指定しています」とあります。
これに関してKPMGのコメントが以下のように記載されています。
Individual taxpayers will also be required to include such income as assessable income upon filing their annual personal income tax (‘PIT’) returns. 15% withholding tax suffered should be creditable against their final tax liability.
(参照:KPMG / Taxation of Digital Assets: https://home.kpmg/th/en/home/insights/2018/05/tax-news-flash-issue-380.html)
Google先生出番です!
「個人納税者は、年次個人所得税(「PIT」)申告書を提出する際に、査定可能な所得などの所得も含める必要があります。被った15%の源泉徴収税は、最終的な納税義務に対して控除される必要があります。」
「タイの仮想通貨税金は15%!」説はここから来ているのでしょう。
タイの個人所得税を詳しく見てみよう
今回主に参考にしたのでが、PwC, KPMG等の外資系大手会計事務所やその他Webサイトからの情報です。
主に二種類に分類でき、前者がJETROや日本語ブログに多くみられる「税金15%」で、後者が「利益は所得税に加算されての累進課税」です。
ばんばんは今回の調査を通じて後者が正しいと考えていますので、こちらを説明したいと思います。
基本的には各サイトは同じような内容で説明されていますが、PwCが日本語版の「タイ国税務小冊子 2020/2021」をWebに掲載していますので、重要な点を引用させていただきました。
課税所得分類
タイでは課税所得は8種類に分類されて、仮想通貨は株式や投資信託と同じカテゴリーに入っています。
利息、配当金、投資家への利益分配金、会社またはパートナーシップの合併、買収あるいは解散による利益、株式譲渡益、仮想通貨またはデジタルトークンの譲渡により発生した利益等
(参照:PwC 「タイ国税務小冊子 2020/2021」https://www.pwc.com/th/en/tax/assets/2020/thai-tax-booklet-2020-2021-jp.pdf )
キャピタルゲイン課税の例外
「おいおい、タイでは株式や投資信託のキャピタルゲインは無税でしょ?」と突っ込まれそうですが、あくまでも上記カテゴリーの中の特例事項として、以下を課税の例外と規定されています(他2項目)。
タイ国証券取引所に上場されている株式をタイ国証券取引所で売却した場合のキャピタルゲイン、投資信託の売却によるキャピタルゲイン
(参照:PwC 「タイ国税務小冊子 2020/2021」https://www.pwc.com/th/en/tax/assets/2020/thai-tax-booklet-2020-2021-jp.pdf )
仮想通貨は例外事項として規定されていませんので、個人所得の課税対象と考えることができます。
個人所得税率
タイでは個人所得税は総所得から控除分を差し引いた課税所得に対して0 – 35%の累進課税で税率が設定されています。
大学卒業後すぐに就職して月給17,000バーツほどの給料の場合、控除分を考えると税率は0 – 5%程度です。
課税所得(バーツ) | 税率(%) |
0 – 150,000 | – |
150,001 – 300,000 | 5 |
300,001 – 500,000 | 10 |
500,001 – 750,000 | 15 |
750,001 – 1,00,000 | 20 |
1,000,001 – 2,000,000 | 25 |
2,000,001 – 5,000,000 | 30 |
5,000,001 – | 35 |
「ということは何か!? 仮想通貨で1,000万バーツ儲かった際の税率は35%なんかい?」と逆ギレされそうですが、基本的には上記の表に基づいて、5%から課税されて、500万バーツ以上については35%課税されると考えれられます。
仮想通化の税金の考え方
ここまでいくつかの情報をバラバラと引用してきましたので、ここで一旦まとめてみましょう。
・仮想通貨の利益に対して源泉徴収税15%が徴収される
・仮想通貨の利益は課税所得に加算し、累進課税の税率表に基づいて納税する
・すでに支払った源泉徴収15%は確定申告時に調整される
ということになります。ただ、、、2020年までに仮想通貨で儲けた人たちが、このように税金を支払っているかというと・・・、おそらく「NO」だと思います。
日本では仮想通貨税の計算方法ガイドラインが示されていますが、タイではそこがまだ未整備なんです。つまりやり方が分からない・・・。たぶん、税務署も・・・。
現在の問題点
現在考えられる問題点をいくつかあげてみましょう(タイ人の専門家っぽい人がYou Tubeで説明していました。タイ語)
利益の算出方法
仮想通貨のトレードをやっているとわかるのですが、膨大な量のトランザクションが発生してきますので、各取引の利益を計算するのが絶望的に難しいです。先入先出法なのか、後入先出法なのか、平均してよいのか等々。
また、利益確定のタイミングも明確になっていないとのこと。日本語のブログでは、仮想通貨を銀行に送金したタイミングいう記載を多く見かけましたが、課税所得を規定している以下の文言を拡大解釈しているように想像されます。
タイ国外を源泉とする所得を得た居住者は、その年においてタイ 国内へ送金した所得あるいは海外から持込んだ所得に対してのみ課税されます。
参照:PwC 「タイ国税務小冊子 2020/2021」https://www.pwc.com/th/en/tax/assets/2020/thai-tax-booklet-2020-2021-jp.pdf )
Youtube内の専門家は、トレードが完了した時と考えるのが妥当と説明していました。これは、あくまでもタイ政府に認可されている取引所を利用したケースです。
※タイ政府はBinance等の海外取引所の利用は違法であるとタイ国民に警告しています。
Withholding TAX
仮想通貨税の項目で説明した源泉徴収税は2021年5月現在、おそらく機能していないと思われます。源泉徴収というからには、取引所で15%分差し引いて納税してくれれば良いと思うのですが、各取引所は実施していません。
理由は簡単で、「そもそも計算方法が明確でないので利益がいくらか分からない。だから、その15%なんて源泉徴収できない」という論理です。
全くその通りだと思います。
結論
2021年5月現在のタイの仮想通貨に対する税金に関して色々と考えてみました。
結論としては、最大35%課税されることになっていますが、その計算方法が曖昧でよく分からない・・・。
今年はタイでも仮想通貨ブームが起きて、税務署に本気になってくることが考えられますので、なんとか2021年末までには分かりやすいガイドラインを示して欲しいものです。
ばんばんも念のため、取引所口座から銀行へ送金を行わないようにしています(税務署に狙われそうなので・・・。「タイで投資を始めてみた」参照)。
また、今回の調査は、税務署に直接問い合わせをしていない点、ご理解いただけますようお願いします。
実際に確定申告をしたことがある方がいれば、コメント等いただけるとありがたいです。